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第21話 この絵が、好きなんです

last update publish date: 2026-07-21 20:00:00

『今週末、お時間はありますか』

金曜の夜に届いたメッセージを、土曜の朝になっても見つめていた。

花束のお礼も言えなかった。『届きましたか』にも答えられなかった。なのに、また返信できないでいる。

ネットで見つけた記事のことが、まだどこかに引っかかっていた。

でも返信できないでいる本当の理由は、それだけじゃない気がした。

日曜の昼前、気づいたら『今日の午後なら』と打っていた。

送信ボタンを押してから、スマホを置いた。

自分でも、なぜそうしたのかわからなかった。

◇

待ち合わせは、上野の美術館だった。

四月の日曜日、美術館の前には家族連れや観光客が行き交っている。

その中に、紺のジャケットを着た黒瀬さんの姿を見つけた瞬間、周囲の音が遠のいた。

ラウンジや高級レストランで見ていた、隙のないスーツ姿ではない。

白シャツにジャケットを羽織っただけの姿は新鮮で、それだけで「プライベートな時間に彼と会っているのだ」と

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  • 身代わりお見合いの花嫁〜冷徹社長は偽りの愛を見抜いている〜   第86話 橋本さんへ

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  • 身代わりお見合いの花嫁〜冷徹社長は偽りの愛を見抜いている〜   第5話 鳴らないはずの電話

    一段階低くなった姉の声が、耳の奥に刺さった。『あたしが今の彼との話をまとめるまで、黒瀬の目を逸らし続ける必要があるの。黒瀬家とうちの家、色々と込み入った事情があるのよ。あんたが勝手に終わりにして、黒瀬側から実家に何か連絡でもされたら、全部おじゃんになる。わかる?』「わかってる。でも──」『断るなら、五年前のこと、全部バラすから』返事も待たず、音が消えた。また、五年前のことで脅されてしまった。昔から、姉は私の弱いところを探すのが上手かった。私はしばらく、その場に立ち尽くしていた。

  • 身代わりお見合いの花嫁〜冷徹社長は偽りの愛を見抜いている〜   第4話 終わったはずが

    『先程は、お時間をいただきありがとうございました。──黒瀬柊』彼からのメッセージは、それだけだと思っていた。数秒後、同じ番号から、もう一通届いた。『次回、ご都合の良い日を教えていただければ、合わせます』画面の番号を、もう一度確かめた。間違いない、黒瀬さんからだ。お見合いの書類に載っているのは、姉の連絡先のはず。さっき、私が口頭で伝えた番号──黒瀬さんはそちらに送ってきたのか。「合わせます」という一言。感情がない、と思った。温かくもなく、冷たくもなく、ただ的確だ。

  • 身代わりお見合いの花嫁〜冷徹社長は偽りの愛を見抜いている〜   第3話 見透かされる嘘

    それから、当たり障りのない会話が続いた。趣味のこと、好きな食べ物のこと。プロフィール帳に書くような、差し障りのない質問と回答。姉から叩き込まれた設定を頭の中で繰り返しながら、ボロが出ないようになんとか答え続けた。ところが──。「お仕事は、普段何をされているんですか?」ひどく自然に投げかけられたその質問に、張り詰めていた頭が一瞬でフリーズし、口が勝手に動いた。「広告の……プランニングを──」しまった。姉は、ファッションモデルのはずだ。「……っ、いえ。今はモデルの仕事を少しお休みしていて、その……裏方のお手伝いのようなことを」取り繕うように、慌てて言い直す。顔に熱が集まるのを感

  • 身代わりお見合いの花嫁〜冷徹社長は偽りの愛を見抜いている〜   第1話 姉の身代わり

    「あなた、西園寺真帆さんじゃありませんよね?」その一言で、心臓が止まった。白いカップを持つ指先から、血の気が引いていく。震えそうになる手を悟られないよう、私はそっとカップをソーサーへ戻した。小さな陶器の音が、静まり返ったカフェにやけに大きく響く。どうして?どうしてバレたの?「……何のことでしょうか」かろうじて笑みを作る。けれど、目の前の彼は微笑みもしなかった。「無理に誤魔化さなくて結構です」向かいに座る男──黒瀬グループの社長である黒瀬柊は、こちらをまっすぐ見ていた。責めるでもなく、怒るでもなく。ただ静かに、"真実"だけを見

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